1234hit. 釣り
僕は家近くの海で釣りをしていた。
休みの日やヒマさえあれば、いつもここに来て釣りをする。
家族間ならもちろんだけど、近所の人達にも僕の釣り好きは知れ渡っている。
いつも釣りざおを持って海にいるからだろうか。
まぁ、そりゃあ目立つわな。ここの近くの公園に遊びに来る家族連れとかいっぱいいるし。
母さんから聞いた話では、僕はその近所の人達に関心されてるらしい。
………一体どういう理由で関心されてるのか知りたいな。
「今日もいい天気じゃのぅ。」
「うわっ!! びっくりした!」
突然、横合いからおじいさんに声をかけられた。しかも思いきり隣に座ってるし。
70歳はゆうに超えてるんじゃないか?
「ボウズ、いつもここにおるのぉ。魚は釣れるかね?」
「い、いえ…。最近はアタリすら来ないです。」
「そうか。じゃあ、魚達みんな寝てるかもしれんのぉ。」
フォッフォッフォッ、とマンガに出てきそうな笑いをおじいさんはした。
な、何なんだこの人……。
「ボウズ、名前は何と言う?」
「僕は…圭輔といいます。」
僕は自分の名前を言いながらふとおじいさんの手を見てみると、手のひらの至る所にマメができていた。
しかもマメのつき方に特徴があって、出っ張っているマメとへこんでいるマメがあった。
もしかして、おじいさんもよく釣りをしているかもしれない。
釣り名人とかプロの人によく見られるマメのつき方だからだ。
「おじいさん、漁師なんですか?」
「昔はそうじゃったが、もう10年以上も前に辞めた…。」
「えっ……?」
僕は思わず声を出してしまった。定年退職とか病気で辞めたのかなとか、そう思う前に驚いたからだ。
その時のおじいさんの表情が、とても暗く悲しい顔をしていたんだ。
僕は、これは定年退職や病気の理由で辞めたわけじゃないとすぐ察知した。
理由を聞きたかったけど、なぜかそこに足を踏み入れてはいけないような気がした……。
「さてと。」
不意に、おじいさんが立ち上がった。
「釣りの邪魔して悪かったのぉ。わしゃもう帰ろうの。」
「あ、いえ…別に邪魔なんて。」
おじいさんは思い切り背伸びをした。何だか気持ちよさそうだ。
じゃあな、とおじいさんが背中を向けた時、突然足を止めた。
「圭輔。」
「は、はい。」
突然名前で呼ばれて、少し戸惑った。
「釣りは好きか?」
「え…? ……ハ、ハイ好きです。」
「じゃあ、これから先どんな事があっても釣りを好きでいてくれ。嫌いにはならないでな。」
そう言って、おじいさんは完全に背中を向けて歩いていった。
「……“これから先、どんな事があっても、釣りを好きでいてくれ”…。一体どういう意味なんだろ?」
僕は、さっきのおじいさんの悲しい表情をしていたのと関係があるのかな……と思った。
もし関係があるとしたら、一体おじいさんに何があったんだろうか。
そう思いながら、今日もアタリが来なかった事に落ち込んで道具を片付け、この場を後にしようとした。
そんな時。
「圭輔ー。」
僕の名前を呼びながらここに向かって歩いてくる人を見かけた。よく見るとお姉ちゃんだった。
「もしかして、今あのおじいちゃんと話してたの?」
「うん。いつもここに来てるのかなぁ…、僕がいつもここで釣りしてるって事知ってたよ。」
「そう…。海に来れるようになったんだ。」
「えっ? 姉ちゃんあのおじいさん知ってるの?」
「一応ね。とてもかわいそうな人よ……。」
一瞬でお姉ちゃんの顔色が悪くなった。
さっきの、おじいさんの悲しい表情やあの言葉の意味と何か関係があるのかな………。
そう思い、僕はお姉ちゃんに問いただした。すると、お姉ちゃんは答えてくれた。
もう10年以上も前の事だった。
おじいさんは13歳の孫を連れて、釣りをやりに船で沖まで行った。
おじいさんは漁師という事もあって、孫に釣りの楽しさと自然の偉大さを教えたかったそう。
2人で楽しく過ごしているそんな時……
突然突風が船を襲い、2人は海に投げ出されてしまった。
2人はバラバラになり、どこへ流されてしまうのか分らないまま…ただ波にのまれていた。
幸い、おじいさんは出発した船着場に偶然流れ着き一命は取り留めた。
が、孫は全く見つからず……
1週間後に遺体となって海の底から発見されたのだった。
孫の両親はおじいさんを許さず追い詰めて追い詰めて、
おじいさんは絶望と責任に押しつぶされ、漁師を辞めずっと引きこもり状態になっていた。
「……そんな事があったなんて…。」
僕はとても悲しかった。おじいさんは悪くないのに…あの嵐のような突風のせいなのに………。
一番悲しくて悔しい思いをしてるのはおじいさんの方じゃないか。
「おじいさん、かわいそう…。」
「でしょ? ………もしかしたら、圭輔の事を知ってたのはお孫さんに似ていたからかもしれないわ。」
「えっ、僕が?」
驚いた。確かに僕もお孫さんと同じ13歳だけど…。
「家から見える圭輔が釣りをしている姿とお孫さんを、重ね合わせていたんだと思う…。だからこうやって克服できたのかもね。」
まっ、あくまで私個人の推測だけどね! とノーテンキに言った。
「おじいちゃんの心を癒せるのは圭輔、あんたしかいないわ。」
「僕、だけ………。」
「そっ。心から笑えるようになるまで傍にいてあげて。本当に、かわいそうな人だから…さ。」
「………うん、分かった!」
僕とお姉ちゃんは顔を見合わせ、お互いほほ笑んだ。
ここまで話を聞かされちゃあ、手助けしないわけにはいかないじゃないか。
僕でいいなら、僕にしかできないなら…………できる限りの事はやろうと思う。
そう決意しながら、僕はお姉ちゃんに道具を持ってもらいながら家に帰った。
あとがき
HP観覧者数1234人突破のキリ番小説です。
全っ然気付かなかったぞ私!! GWの宿題&風邪にやられて載せられなかったよ!?(何。
今回は……というか、今回も思いつく文章どんどん書きました。
加筆減筆、一切ナッシングww(おい。
っつーか、もっとマシな話思いつけんのか桧頼…。
誤字脱字などございましたらお知らせくださいませ。
なーんかビミョーに話がかみ合ってないように感じるのは私だけ…??
2009.05.03
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